第17回北陸地方雪崩講習会を開催

  • 日時 2014年1月19日(日) 9:00~16:00
  • 場所 松任総合運動公園(会議室・フィールド)
  • 講師 川田邦夫氏(富山大学名誉教授)・地方講習会講師
  • 参加者 36名

第17回目の開催となる、恒例の雪崩講習会(のうちの机上講習編)が開催されました。机上講習への参加者は36名で、近年では最多の受講者数とのことです。

昨年との違いは、机上講習の時期を1月にしたこと、北陸のみならず、計6県からの参加があったこと、新装なったカラー版のテキストを採用したことなどでしょうか。そして、小人数のグループで複数の講師のもとで実技講習を行う特色は健在です(実施のために、多くのスタッフが動いています)。

午前の前半は、テキストを用いての川田先生の講義を拝聴し、引き続き午前の後半にはパワーポイントの資料を交えて補足説明がありました。雪崩を知るには、雪を知る必要があり、経験とそれを裏付ける理論・訓練そして学んだことを実践することが重要とのご指摘がありました。テキストで知識を学ぶ際に、物理学の理論的な視点から雪を捉える、そういう考え方・見方もご紹介して、基礎的知識の裏付けの中で経験を積むことで得るものがあることを期待して、わかりやすい資料の他に、少し難しい話もさせていただく、との講義の意図もご紹介下さいました。

  • 降った雪は、積もったあとも時間の経過とともに性質を変えて行く。温度一つとっても、温度が高くなることで雪は安定してゆく要素があるが、温度が上がりすぎて水が出てくると状況は変わってくる。低温が長期間続いた状態で降雪があれば、雪が安定しなくて乾雪なだれになる恐れが出てくる。一方、低温(氷点下の状態)でも雪が積もってしばらくたつと、積雪が圧縮して雪の密度が増していく方向に向かう。様々な作用が同時に起きる。雪は、簡単ではない。
  • 氷点下の状態であっても新雪がしまった雪になっていく変化は、雪が重みで圧縮していく効果以外に、雪粒間での水蒸気の作用によっても起こる。氷点下であっても積雪内の隙間(空気)には水蒸気が存在し、雪粒の凸部分から凹部分に蒸発した水蒸気が移動し、雪粒同士が接触した部分が結合してしまり雪に変化していく。小さな雪粒が大きな雪粒に吸収されたりという作用もある。
  • 積雪層内に温度勾配が発生する(雪の表面が夜間に冷えるなど)と、水の状態を経ない凍ったままの状況でも、雪粒の間で水蒸気の移動が生じ、積雪の中に霜のような結晶が生じ、しまり雪にならずに霜ざらめ雪になって雪崩の発生の元になる弱層が生じる原因の一つとなる。
  • しまり雪は、高山ならともかく、日常生活圏の中では北陸地方ではなかなか見つからない。霜ざらめ雪やざらめ雪になっていくことのほうが多いかもしれない。
  • 積雪の後に低温が継続すれば、一般には雪がしまっていく作用が働く。しかし、いったん弱層が生じた積雪に対してその後低温が継続すると、雪崩が起きやすい雪の状態が(たとえば)1週間そのまま保持されてしまう、というようなことも起きてしまうことはある。気温が低い日が続いたから、雪がしまっただろう、とは言えない状況も起こりうる。
  • 自然は移り変わる。自然現象にとって、20年に一度、30年に一度ということは、状況の変化によって普通に起こりうることで、人間の経験だけで対処できると思うのは甘い考えだ。

他にも多くの有意義なお話をいただきましたが、紹介しきれません。多くの方に受講をお勧めしたいです。なお、ご講義内容のまとめに誤りがあれば、報告者の責任です。

弱層

弱層の発生

 

なだれ

なだれ事故の現場

 

午後には、昨年の講習会でのビーコンを用いた捜索のデモ動画が流され、ついで座学でビーコンの取り扱いの基本、捜索の基本などの説明がありました。その後は、6名ずつ6班に分かれて各班2名の講師により、ビーコンの基本的取扱い、プローブの取扱いをみっちり講習しました。2月の実技では、ビーコンがどこにあるかわからない状況で受講者の方にチームを組んでいただいて、ビーコンを使った捜索・掘り起し・搬送の準備なども体験いただく予定です。深さもまちまちの複数の埋没者を見つけて迅速に掘り出すことがどれくらい難しいか、どうぞお楽しみに。また、実技講習に向けて、宿題(レポート課題)がそれぞれのコースごとに出されています。テキストを見ながらお考えください。

ビーコン基本

ビーコンの基本的取扱い

 

巻尺

巻尺でビーコンの距離表示の挙動の確認