2013年度 ベルクバハト無雪期救助訓練 実施報告

  • 2013年6月9日(日) 8:30~14:30
  • 場所:奥医王山 山頂付近 栃尾口に向かう沢筋の源頭部
  • 参加者:計42名
  • 主催:石川県勤労者山岳連盟
  • 主管会:金沢ハイキングクラブ

今年度のベルクバハトの無雪期救助訓練が、上記日程で実施されました。ハイキングクラブ会員6名からなるパーティが、栃尾口から入山し、途中の沢筋で道を見失い、また滑って転倒して、自力歩行が困難という設定です。この際に、持参していたスマートホンで、あとから遭難地点での緯度・経度が判明し、現在位置を無線で金沢市内に待機する基地局に通報する、というハイキングクラブ内での通報訓練も実施しました。

まず、ハイキングクラブの要救助者役と訓練実施協力メンバーが、6:40に集合場所に集まって先に入山し、遭難想定位置に待機するとともに、無線による非常連絡訓練の通信の確保を行いました。また、スマートホン、GPS機能内蔵カメラ、緯度・経度が表示できるガラケー、登山用のGPSなど、多種類のGPS機器で、遭難想定地点の緯度・経度の読み取りを行い、地図と照らし合わせて現在位置を確認します。登山用GPSは、もちろん安定した緯度・経度を示しますが、スマートホンも正確な緯度・経度を表示します。さらに、GPS機能内蔵のデジカメでGPS情報を表示させると、十分に現在位置を把握できることを確認しました。カシミール3Dなどで、緯線・経線入りの見やすい地図を印刷できるので、この使い方は「あり」です。

その後、所定の計画に従い、訓練を実施しました。

救助隊を含むメンバーの到着

要救助パーティの待機完了後、救助隊を含む参加者が到着(地図で要救助者の位置を確認・想定訓練)

 

引き上げシステム構築

3分の1引き上げシステムを構築(ペツルID、レスキューセンダー、プーリーなどを使用)

 

akコンビ引き上げ

要救助者を背負ってベルクバハトの猛者が引き上げます。

 

usコンビ引き上げ

もう一人の要救助者を無事引き上げて、ザック搬送の準備をした位置まで移動

 

各会講習1

各会講習2

各会講習3

1次隊の3名のベテラン隊員の方をリーダとして、3グループに分かれて専用器具が使えない状況での引き上げの習熟訓練

ザック搬送準備

ザック搬送開始

奥医王山山頂から見返りの大杉まで、ザック搬送で2名の要救助者を降ろす

講評

監督/ベルクバハト隊長からの講評(参加下さった皆様、ありがとうございました)

☆各種GPS機器の比較☆

救助訓練の際の昼食時間を利用して、参加者の方の10数台あまりのGPS機器での緯度・経度表示を比較するテストを行いました。比較に使用した機器は、下記です。

  • 汎用GPS(etrex20, etrex20J)
  • Androidスマホ系(MEDIAS, Galaxy Note, SONY タブレットなど)
  • iphone系(iphone4, iphone4S 2台)
  • ガラケー(ドコモGPS機能あり、au GPS機能なし)
  • スント腕時計アンビット GPS内蔵
  • ソニー パーソナルナビゲーションシステム NV-U37
  • GPS内蔵デジタルカメラ パナソニック DMC-TZ10(16,000円で購入の型落ち品)

その結果わかったことは、下記です。

  • 汎用GPSの2台は、さすがにぴたりと表示が一致しています。安心感があります。
  • スマートホン、iphone系、スントのGPS機能は、それぞれ汎用GPSとぴたりと表示が一致しました。1台だけ少し表示が違いましたが、経度が0.5秒(距離10数mほど)違っただけです。
  • びっくりしたのは、パナソニックの型落ち品のGPS内蔵カメラ DMC-TZ10です。汎用GPSと表示が一致しました。
  • ドコモのガラケー(GPS機能内蔵 )は、緯度・経度が0.6秒ほど他のGPS機器とずれています。緯度について距離15m強、経度について距離10数m強の違いということです。
  • auのガラケーは、緯度・経度についてそれぞれ1分単位の表示の違いがありました。これは、数km単位での位置ずれがあることを意味します。
  • NV-U37は、(旧)日本測地系で緯度・経度を表示していました。

上記の比較は、昼食のため30分ほど同じ場所にじっとしていた状況の中での比較です。このため、山道を歩いているときには、また違ったデータになる可能性があります。歩く程度の移動速度で差が出るわけではありませんが、歩いているときは、スマホなどをザックやポーチなどの中に格納しているでしょうから、アンテナを上空に向けることに特に気を使っていなければ、衛星からの電波を受信する点で不利になる可能性はあるからです。

そういうことを差し引いていただく必要はありますが、汎用GPS、スマートホン、iphone、GPS機能内蔵デジカメなど、GPS機能を内蔵している機器であれば、精度は内蔵しているGPSチップやアンテナの性能などで規定されるので、条件さえよければ同等の精度が出ると考えてよさそうです。今回テストしたGPS機能内蔵デジカメは、衛星からの電波を捕捉する頻度は低いようで、場所を移動したときの緯度・経度の表示の反応が鈍いように感じました。要所要所で現在位置を確認したり、万が一の時の現在地確認の用途であれば、使えるかもしれません。Oさんは、新規に購入なされたGPSデジカメをお持ちで、こちらは衛星の捕捉も早く、より進化している感じでした。

テストしたauのガラケーは、天気予報を表示する機能の付随機能として、緯度・経度表示機能はあるものの、この機能は携帯の圏外では使えないとのことです。表示形式はGPSと同じで、立派なものです。ここから先は想像ですが、この機種は携帯の基地局からの電波で現在位置を認識し、認識した現在位置により、地域に合わせた天気予報を表示するのではないかと思います。天気予報の用途ならば、十分な精度です。ただ、緯度・経度の見た目の表示形式がGPS機器と同じため、これをGPSと思って現在位置と考えた場合は、おかしなことになります(数km単位の誤差があります!)。

今回テストしたドコモのガラケーのGPS機能は、誤差数10mというところで、スマホ一族には少し負けています。この理由はわかりませんが、スマホに比べれば機種自体が古いか、またはガラケーは筐体が小さいためにGPSのアンテナ(たいていは平面アンテナ)を配置するスペースが限られているのかもしれません。特に、今回見せていただいたような折り畳み携帯の場合は、画面を開いた状態と閉じた状態で、GPSアンテナの周囲条件が変わる恐れはあります。もっとも、スマホも機能満載で、異なる周波数帯のアンテナを何本も内蔵しているので、GPSアンテナを配置できる場所には余裕がありません。汎用GPSは、GPS専用機器ですので、その点はスマホよりもやっぱり一日の長があります。液晶も屋外でも見やすいです。

Galaxy Noteは、使うアプリケーションによって、緯度・経度を10進数で小数点表示するか度・分・秒表示で表示するかの違いがありました。これは、スマホでは起こりうることです。よく使われるアプリであるYamaNaviでの緯度経度表示は、GPSで一般的な度・分・秒表示でした。

最後に、ソニーの自転車・アウトドア用ナビであるNV-U37での緯度・経度表示は、現在のGPS機器としてはありえないはずの旧日本測地系表示でした。測量法で2002年4月1日からは世界測地系を使うことが定められておりますので、旧日本測地系表示はちょっといただけません。世界測地系のGPS機器と比較すると、緯度・経度の数値が同じでも、実際の場所とは距離にして数100m単位の差が出ます。ただし、NV-U37はNV-U37の測地系に対応した専用地図を内蔵しています。ですから、NV-U37単体での使用には、何ら差し支えありませんし、ナビとしての機能はカーナビのように秀逸のはずです。ここから先は想像ですが、NV-U37の地図は、カーナビ用の地図に由来しているのではないでしょうか。それに引きずられる形で旧日本測地系を採用している、ということはありえることです。

以上、少し主観も入っていますが、ご報告まで。ご協力くださった皆様に感謝申し上げます。